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アメリカの核融合企業、Helion EnergyとTAE Technologiesの最新動向
核融合技術は、持続可能なエネルギー源としての可能性を秘めています。その中でも、アメリカの企業であるHelion EnergyとTAE Technologiesは、この分野での革新的な取り組みを進めています。本記事では、これらの企業の最新の動向について詳しく解説します。
Helion Energyとは
Helion Energyは、ワシントン州エバレットに所在するアメリカの核融合研究企業です。同社は、磁気慣性核融合技術を開発し、ヘリウム-3と核融合電力をアニュートロニクス核融合によって生産しています。OpenAIのCEOであるSam Altman氏の最大の投資先としても知られています。
Helion Energyは、地球を救う革新的な企業として注目されています。その理由の一つは、彼らが研究する「核融合発電」という技術が期待されているからです。核融合は、水に含まれる重水素と、重水素原子が融合してできるヘリウム3から、クリーンで信頼性の高い、豊富なエネルギーを生み出します。地球の海には、数十億年分のゼロカーボン核融合エネルギーを生み出すのに十分な量の重水素が存在しています。
Helion Energyは、核融合による電力供給を現実のものとしています。そのために、彼らは「核融合エンジン」技術を開発しました。この技術は、2005年から2012年にかけて行われたIPA(Inductive Plasmoid Accelerator)実験に基づいています。IPA実験では、速度300km/s、重水素中性子生成、重水素イオン温度2keVを達成しました。
現在、Helionは7番目の核融合装置である「Polaris」に注力しており、この装置は核融合による純電力の実証を行う最初の核融合装置となる予定です。ヘリオンのパルス核融合装置は、核融合から炭素ゼロの電力を生成するために使用されるエネルギーを直接回収する装置で、ヘリオンの核融合燃料である重水素とヘリウム3がガスとして使用されます。このプロセスはミリ秒単位で発生し、パルス状に繰り返されます。これらの取り組みにより、Helion Energyは核融合技術の実用化に向けて大きな一歩を踏み出しています。
マイクロソフトとHelion Energyの契約
2023年5月、アメリカのIT大手マイクロソフトは、核融合エネルギー企業Helion Energyとの間で、2028年までに50メガワットの電力を購入する契約を締結しました。この契約は、世界初の核融合発電によるエネルギー購入契約とされています。
Helion Energyは、2024年に完成予定の7番目の試作機「Polaris」の開発に取り組んでおり、同機は核融合によって電力を生成する初めての試作機になるとされています。この契約により、Helion Energyは2028年までに、50MW(メガワット)以上の発電能力をもつ核融合発電所の稼働を計画しています。
この契約は、Helion Energyと核融合業界全体にとって重要なマイルストーンとなります。しかし、核融合発電が実証可能であることを証明した企業が存在しないことなどを考えると、「2028年までに商業化を実現する」という目標は、いささか強引な感は否めません。
OpenAIのCEOであるSam Altman氏も、核融合エネルギーとHelion Energyの可能性に注目しており、2021年11月にシリーズEラウンドを主導して約525億円を同社に投資しました。これらの動きから、核融合技術の商業化に向けた期待が高まっていることが伺えます。
TAE Technologiesとは
TAE Technologiesは、アメリカの核融合エネルギー企業で、1998年に設立されました。同社は、最も速く、最も実用的で、経済的に競争力のあるソリューションを提供することを目指して、商業的な核融合エネルギーの開発に取り組んでいます。また、電力管理システムの革新や、次世代のがん治療法の開発にも力を入れています。
TAE Technologiesは、核融合エネルギーの開発において、水素-ホウ素核融合研究の世界的リーダーとして位置づけられています。同社は、地球上で最も豊富に存在する元素である水素とホウ素を用いた核融合反応を追求しており、この反応は環境に優しく、豊富なエネルギーを電力網に供給することが可能です。
TAE Technologiesは、2024年に完成予定の7番目の試作機「Polaris」の開発に取り組んでおり、同機は核融合によって電力を生成する初めての試作機になるとされています。この契約により、TAE Technologiesは2028年までに、50MW(メガワット)以上の発電能力をもつ核融合発電所の稼働を計画しています。
また、TAE Technologiesは、GoogleやChevronなどの大手企業からの投資を受け入れており、これにより同社の核融合エネルギーの開発がさらに加速することが期待されています。これらの取り組みにより、TAE Technologiesは核融合技術の実用化に向けて大きな一歩を踏み出しています。
住友商事とTAE Technologiesの提携
住友商事は、2022年6月30日に米国の核融合関連企業であるTAE Technologies(以下、TAE)に出資しました。この出資を通じて、住友商事はTAEと協業し、脱炭素とエネルギー問題の切り札といわれる核融合分野への知見を深め、社会実装に取り組むことで、カーボンニュートラル社会の実現をより一層進める方針を掲げています。
TAEは、米国・カリフォルニア州で1998年に設立され、先進燃料p-B11(水素とホウ素)を用いることで、中性子が発生せず放射性物質が生成されない、より安全な核融合炉の開発・運転を目標としています。TAEは、20年以上にわたり実験炉の建設・運転実績を持ち、商用化実現に必要な実験データや経験を豊富に保有しています。
住友商事は、TAEの日本初の投資家であり、アジア太平洋市場への商用電力とその他の核融合由来技術の展開でパートナーとなる。住友商事の最大子会社である米州住友商事 (SCOA)は、日本とアジアでTAEベースの技術を追求するための商業協力契約を締結しています。
住友商事が2021年4月に設立したエネルギーイノベーション・イニシアチブは、「カーボンフリーエネルギーの開発・展開」を戦略のひとつとして掲げています。今般のTAEへの出資参画を通じて、核融合発電の最先端の技術・業界動向への理解を深め、住友商事の知見・経験も生かし、核融合発電の社会実装を目指すとともに、発電以外の用途開発にも幅広く取り組むことで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。
まとめ
核融合技術は、持続可能なエネルギー源としての可能性を秘めています。その中でも、アメリカの企業であるHelion EnergyとTAE Technologiesは、この分野での革新的な取り組みを進めています。Helion Energyは、磁気慣性核融合技術を開発し、ヘリウム-3と核融合電力をアニュートロニクス核融合によって生産しています。また、マイクロソフトとの契約を通じて、核融合による電力供給を現実のものとしています。
一方、TAE Technologiesは、最も速く、最も実用的で、経済的に競争力のあるソリューションを提供することを目指して、商業的な核融合エネルギーの開発に取り組んでいます。住友商事との提携を通じて、日本とアジアでTAEベースの技術を追求するための商業協力契約を締結しています。
これらの企業の取り組みは、核融合技術の実用化に向けた大きな一歩を示しています。今後も、これらの企業の動向に注目していきたいと思います。核融合技術が持つ可能性は無限大で、持続可能なエネルギー源としての役割が期待されています。これらの企業の取り組みを通じて、その可能性が現実のものとなる日が待ち遠しいです。